森の家のみなさんへ
向井先生より
当院の敷地の隅にひっそりとたたずむデイケア「森の家」へようこそ。
皆さんがここで滋養に満ちた食べ物を自ら作り、食べ、
足や手を動かして身体を目覚めさせ、自分のことを話し、相手の話を聴き、お互いを思いやる。
時には気持ちがくいちがっても、後では笑顔を交わすことができる…。
そういったことが自然にできるように、共に歩みたいと私たちは考えています。
スタッフ一同より
デイケアに参加されるメンバーさんが、「森の家」でみつけてほしいと願うことが3つあります。
私たちはこの願いをこめて、「森の家」で皆さんの自立を支援していきます。
では、私たちが目指す「森の家」での「自立」とはなんでしょうか。
それは……仕事を持っている・いないにかかわらず、一人の社会人としてのメンバーさんが皆
人から与えられるのではなく、
満足のいく生活を自分で築いていくこと
・・・だと考えています。
「森の家」はごく普通の社会です。
皆さんが「森の家」を通して <普通の社会人として生きていくために必要なこと>を考え、身につけていく。それを側らからそっとお手伝いできればと考えています。
特別難しいことを行なっている訳ではありません。
普通に生活していく上で最低限必要なことが身につけられるようなプログラムを用意しています。その中でメンバーさんそれぞれが、「自立」につながる「気づき」を得て、より充実した生活を送っていけることを願います。
「森の家」の3本柱
の柱
食生活の乱れは生活の乱れにもつながり、心身ともに大きな影響を与えます。
栄養のバランスを考え、食事内容を自分でコントロールし、健康体を維持できることが目的です。
の柱
長期入院を経験すると、自然と体力は低下しています。
病気の性質上、気力が続かなかったりストレスに弱くなっていたり、と退院後も低下した体力の回復が思うようにすすまず、その結果自分に自信が持てないメンバーさんをよくみかけます。
ケーション
の柱
社会で生きていくことは、「人付き合い」ができるかどうか、とも言えましょう。
病気のあるなしにかかわらず、人との付き合いの苦手な方は多いのではないでしょうか。メンバーさんたちも圧倒的に苦手意識を持っている方が多いように感じられます。
まずは「話をする」「人の話を聞く」ことが、お互いの理解を深める第一歩です。相手を知り、自分をわかってもらうためには、やはり黙っていては何も通じません。また、トラブルの多くは言葉が足りないためのすれ違いと、逆に言葉が多すぎたための誤解なのではないでしょうか。
具体的なプログラムの例
●週に2回、メンバーさんで調理を行ない昼食を作ります
外食・インスタント食品・惣菜は手軽で安価な分、野菜不足の偏った食事を続けることになりがちです。精神疾患のみならずメタボリック症候群を危惧されるメンバーさんも少なくありません。
●管理栄養士による本格的な栄養指導も受けます
現在の自分の身体がどのような状態かを振り返り、自宅での食生活をコントロールできるよう考えています。
●ラジオ体操を第一・第二、続けて行います
特に冬場は外にでる機会も少ないため、一日2回行ないます。
●ミーティングに力を入れています
朝と帰りに短めのミーティングを行います。朝はその日の気分・体調について他のメンバーさんに伝えます。帰りは一日の感想を伝え、今後の改善点がある場合は、そのことについて話がすすむこともあります。
●テーマを決めた長めのミーティングを行います
普段感じていること、悩みについて意見交換をおこないます。
●誕生会(毎月実施)
手作りお菓子をつくって、その誕生月の人を皆でお祝いしています。
●脳トレ・塗り絵・書道・ペン字
手先を動かし脳の活性化を促します。
●読書・音楽鑑賞・録画鑑賞
心を鎮め、気持ちの安定を図ります。
●ブログ投稿
近況等、日々の思ったことを投稿することで、社会とのつながりを意識します。
●室内ゲーム(カードゲーム・ボードゲーム・麻雀等)
自室では一人で過ごす事が多いので、お話しをする切っ掛けをつくります。
●体力増進の為に卓球・風船バレー・棒サッカー
夏はパークゴルフ、散歩、冬は軽体操を行います。軽体操ではデイ棟内で身体を動かしたり、ほぐしたりします。
デイケア開設当初はぎこちなかったメンバーさんも、この一年で、多くのことを話せるようになりました。時には言い争う場面もありましたが、自分と他人の考え方の違いに出会い、話し合いのなかで皆さん何かを感じ、自分に気づき、僅かながらも変化がみられます。
人と接することで、相手に譲り、自分の思い通りにいかないことも受け入れ、相手の悩みに共感し、自分の悩みも聞いてもらい、そうして適度にストレスを解消しながら精神のバランスをとる。このことが、精神疾患を抱える方が病気と共存しながら社会で生きていくために最も必要と思われる「特効薬」ではないかと捉えています。